
正しい脳の使い方【プログラマーの考え方に学ぶ】
プログラマーの考え方に学ぶ『正しい脳の使い方』
プログラミングという作業は、ロジカルシンキングの極みみたいな職業であると言えます。
コードを正常に動かすためには、コンピューターに正確な動作を指示しなければいけません。
コンピューターは、全ての作業を0と1で行っていますから、全ての動作は計算をすることが可能です。
バグはどこにあるのか考え、バグの発生場所を突き止め、バグの動作原因を確認し、直していく。
この一連の動作の中には、人々が身につけるべきロジカルシンキングのイロハが詰まっています。
今日の記事では、そんなロジカルシンキングについて、解説を致します。
論理的思考(ロジカルシンキング)とは
論理的思考とは、物事を体系的に整理し、道筋を立て、矛盾なく考える思考法のことです。「ロジカルシンキング」とも言われます。
物事を論理的に捉えながら話すことで、聞き手にも分かりやすく伝えられます。そして問題解決の際も原因特定や解決策の立案に効果的な思考プロセスです。
この「ロジカルシンキング」というのは「ロジカル」と「シンキング」を組み合わせた言葉で、「ロジカル」は以下のような意味を持ちます。
- 物事を体系的に整理する
- 物事を筋道立てて矛盾が無いように考える
- 理論に当てはまっていく様子
- 筋道が通っている考え
課題や問題について以下のような考え方が、企業活動に求められています。
- 要素別に仕分けして結論を導き出す
- さまざまな視点から分析をし、解決策を検討する
論理的思考を支える3つの概念
論理的思考を支える概念は以下3つです。
- 『MECE(ミーシー)』:網羅性を追求する
- 『ビジネスフレームワーク』:MECEの応用
- 『ロジックツリー』:広がりと深さを押さえる
①『MECE』:網羅性を追求する
『MECE(ミーシー)』とは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」」の頭文字を取ったもので、「もれなく・重複せず」という意味があります。つまり「MECE」は話の重複やズレ、漏れを防ぐためのフレームワークです。
一般的にビジネスにおいて、「網羅性を損なうことなく、情報を整理する」という考え方を指します。「MECE」を身に付けると、要素の重複や対象外要素(漏れ)や、論点の齟齬(ずれ)を最小限にできます。
分析や意思決定の確実性を担保しつつ、さらにスピード化を目指せるフレームワークです。
②『ビジネスフレームワーク』:MECEの応用
「MECE」の応用として活用できるフレームワークは以下4つです。
- 3C分析
- 4P分析
- SWOT分析
- バリューチェーン
3C分析
3C分析は以下の3つの要素で構成されているフレームワークです。
視点から問題を分析し、最適な解決策を導き出します。要素とそれぞれの観点から押さえるポイントは以下の通りです。
- Customer(顧客):市場規模・顧客ニーズ・顧客の購買行動
- Competitor(競合):競合の規模・競合のサービス内容・リソース
- Company(自社):市場から見た自社の立ち位置・強み・弱み・リソース
「3C分析」は他社との差別化や自社に合ったターゲティングなどに活かせます。
4P分析
4P分析は別名「マーケティングミックス」とも言われるフレームワークです。以下4つの要素で構成されています。
この4P分析はマーケティング施策立案に必要なフレームワークです。実行段階の直前にあたるため、実行戦略とも言われます。
この4P分析の要素と押さえておきたいポイントは以下の通りです。
- Product(製品):どのような特徴があるのか・どんな人にメリットがあるのか
- Price(価格):市場において適正価格であるか・自社にとって十分な利益を確保できるのか
- Place(流通):実店舗もしくはECサイトなどユーザーの購買につながる流通経路は何なのか
- Promotion(販促):ユーザーの関心を引く効果的な最適なプロモーション活動にどのようなものがあるのか
4P分析を活用することで、リスクを抑えつつ効果的なマーケティングを行うことができるでしょう。
SWOT分析
SWOT分析は以下2つを強み・弱みの2つの観点から分析するフレームワークです。
- 自社を取り巻く外部環境
- 自社の資産やブランド力などの内部環境
下記の4つの要素を組み合わせたパターンで分析をしていきます。この頭文字をとって「スウォット分析」と言われています。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
この組み合わせのパターンは全部で4つあります。
- Strength×Opportunity 強み×機会
- Weakness×Opportunity 弱み×機会
- Strength×Threat 強み×脅威
- Weakness×Threat 弱み×脅威
このパターンに照らし合わせながらさまざまな状況に応じたマーケティング戦略を想定することが可能です。
バリューチェーン
バリューチェーンは企業の事業活動をそれぞれの部門に切り分け、競合と比べてどの部門が優れているのか、どの部門を強化するべきなのかを分析するフレームワークです。
自社の事業活動の全体を客観的に分析できるというメリットがあります。これにより自社の強みや強化すべき点が明確になるはずです。
事業活動を1本の鎖(Chain)に例え、各部門の価値(Value)を高めることで総合的な価値を高めるという目的があり、競合の差別化や事業戦略の見直しなどに活用できます。
③『ロジックツリー』:広がりと深さを押さえる
「ロジックツリー」は、テーマや課題をツリー型に分解して問題解決の方法を洗い出すもので、以下3種類で構成されています。
- 要素分解ツリー(What ツリー)
- 原因究明ツリー(Why ツリー)
- イシューツリー(How ツリー)
ロジックツリーの種類 | 意味 |
要素分解ツリー (What ツリー) |
問題の全体を捉えて、要素や部分に分解する |
原因究明ツリー (Why ツリー) |
問題を引き起こしている原因を究明する |
イシューツリー (How ツリー) |
問題に対する解決策・改善策を洗い出す |
このロジックツリーに役立つのが、上記で紹介した「MECE」です。
ロジックツリーを書き出すときは必ず「MECE」を意識し、ツリーで漏れている要素や、ツリーの内容に重複しているものが無いかを意識してみましょう。
理論的なことにこだわる人の特徴
倫理的なことにこだわる人の特徴として以下5つ挙げられます。
- 自分が正しいと思っている
- 正論を言うのが好き
- 感情を軽視しがち
- 意外と浅はかな考えをすることも
- アドリブが苦手なタイプもいる
自分が正しいと思っている
理論的なことにこだわる人は、自分が正しいと思っていることが多いです。
理論にこだわるだけあって頭がいい人が多く、自信があります。しかし、理論を過信しすぎている部分も見られます。
理論とはかけ離れた事態になると焦る、理論的に当てはまらないことを言う人を小馬鹿にすることもあります。
理論が絶対的ではないと頭では理解していても、理論が正しいという意識が強いという認識もあるそうです。
正論を言うのが好き
理論的なことにこだわる人は、正論を言うことが好きなことが多いです。正しさに強いこだわりを持っており、ある意味正しさに甘えているとも言えるでしょう。
正しければ何をしても問題ない、責められない、正しくない相手が全て悪いと思っているところもあります。そのため、無意識のうちに、相手がミスをしたら正論を言って責めてしまうそうです。
ただし、自分では正論が好きなことを自覚していないので、周りから疎まれてしまうことも多いです。あくまでも自分は悪くないと思っているので、周りとの関係に亀裂が生じ、浮いてしまうのでしょう。
感情を軽視しがち
理論的にこだわる人は、感情を軽視しがちな傾向があるため、主観や個人のこだわりを軽く考えてしまいがちです。
理論的なことを学び、加えて論理的に考える癖があるため、曖昧な人の感情を理解することを面倒だと感じてしまいます。なぜなら、感情には明確な定義や答えがなく、分かりにくいからです。
感情的な人を見下してしまうこともあるので、人の気持ちを軽く考え、トラブルを引き起こすことも珍しくありません。
意外と浅はかな考えをすることも
理論的にこだわる人は、基本的には頭が良く深い思考をする傾向があります。しかし意外なことに、時には短絡的で浅はかな考えをすることもあるのです。
一度理論的に正しいと思うと、それを信じ込んでしまいます。自分の知識や法則に頼り切って、びっくりするような失敗をしてしまうこともあるでしょう。
アドリブが苦手なタイプもいる
理論的にこだわる人の中には、アドリブが苦手なタイプもいます。理論に当てはまらない予想外の事態が起きると、慌てたり、パニックになってしまうのです。
ゆっくり考えることは得意ですが、その場で考えて柔軟な対応をすることが苦手な人も一定数います。そのため、頭が良くても役に立たないというレッテルを張られてしまうこともあるでしょう。
論理的思考を身に付けるメリット
「論理的思考=ロジカルシンキング」を身に着けるメリットとして以下3つ挙げられます。
- 問題解決能力の向上
- プレゼン力や提案力の向上
- コミュニケーション能力の向上
メリット①:問題解決能力の向上
問題が起こった本質的な原因を追究し、解決のために必要な対策を導き出せます。そのため、あらゆる問題に対する「問題解決能力」が向上します。
論理的思考が身についていないと、問題が起きた時に何から手を付けていいのか、何を冠画ればいいのか分からず、漠然とした対策を講じています。
思い付きやなんとなくで行った対策は的が外れてしまう可能性も少なくありません。
しかし理論的思考が身に付くと、問題が起きた原因との因果関係を考えながら現状を分析できるため、効果的な対策を講じられます。問題解決力が向上すると、予想外の出来事にも対処できたり、仕事の成果も上がりやすくなるでしょう。
そこで以下のような論理的フレームワークを使用することで、問題発生箇所や原因を特定できます。場当たり的な対処法ではなく、問題が解決できます。
- ロジックツリー
- MECE
メリット②:プレゼン力や提案力の向上
2つ目のメリットは「プレゼン力や提案力の向上」です。
ビジネスの世界では、立場の違いから意見が対立する場面もあります。そんな時に自分の意見を通しつつ、相手の納得を得てスムーズに物事を進めるためには、以下が欠かせません。
- 立場や意見の違いに左右されない論理
- 提案内容の筋道を立てた説明
論理的思考が身に付くと、物事を順序立てて分かりやすく説明したり、主張の根拠をした上で意見ができます。
内容の分かりやすさや説得力が求められるプレゼンや提案で、理解しにくい内容や根拠が足りないと聞き手も納得できません。
しかし論理的思考ができると、結論から逆算し、どのように伝えると分かりやすいかを考えながら説明できるため、聞き手が内容を理解しやすく説明できます。「なぜそうなのか」を根拠も矛盾なく明確に話せるため、説得力も増します。
メリット③:コミュニケーション能力の向上
3つ目のメリットは「コミュニケーション能力の向上」です。
コミュニケーション能力とは以下2つの能力のことです。
- 相手の意見を正確に理解する「理解力」
- 自分の主張を的確に伝える能力
コミュニケーション能力があれば、相手の考えと自分の考えをすり合わせて、
- 論点のズレ
- 事実と意見の違い
を最小限に押さえることができ、交渉をスムーズに進められます。
さらに内容を整理し、道筋を立てながら意見を伝えられるため、自分の考えを相手に理解してもらったり、必要な情報を漏らさず伝えられます。
2.論理的思考ができる人の特徴8つ
論理的思考ができる人の特徴として以下8つ挙げられます。
- 2-1.何に対しても「なぜ○○なの?」と考える癖がある
- 2-2.事実と事実以外を区別できる
- 2-3.説明をするときに因果関係を必ず示す
- 2-4.感情に振り回されない
- 2-5.確からしい根拠を常に求めている
- 2-6.様々な視点で物事を見ることができる
- 2-7.たとえ話が得意
- 2-8.人の気持ちをわかろうとする(前提を揃える)
2-1.何に対しても「なぜ○○なの?」と考える癖がある
論理的思考ができる人の特徴として、何に対しても「なぜ?」と考える癖があります。
「なぜ?」というのは、課題について思考する際の、
- 「So What?(つまり?)」:問いかけ、結論を探る
- 「Why So?(なぜ?)」:問いかけ、原因を探る
という、問題や課題を深掘りする際に効果を発揮します。
事象や課題に対して常に上記の2つの問いかけをしながら考えるため、話し相手にも根拠と結論のスムーズな理解を促せるフレームワークです。
2-2.事実と事実以外を区別できる
論理的思考ができる人の特徴として、「事実と事実以外を区別できる」ことが挙げられます。何に関しても事実ベースで判断をする特徴があります。
常に「何が事実なのか」「何が仮定なのか」を区別して考える癖がついています。
2-3.説明をするときに因果関係を必ず示す
論理的思考ができる人の特徴として「説明をする時に因果関係を必ず示す」ということが挙げられます。
例えばカフェにいって、温かい飲み物を頼んだとします。
「何で温かい飲み物を頼んだの?」ときくと、おそらく「休憩するために来たから。リラックス効果のある温かい飲み物を頼んだ」というように、さらっと「温かい飲み物を頼んだ理由」、つまり因果関係を一緒に説明するでしょう。
2-4.感情に振り回されない
「感情に振り回されない」ことも論理的思考ができる人の特徴です。
事実とそれ以外を区別できるように、事実と感情も区別できます。
常にどこか冷静で、100%感情に支配されることは滅多にないでしょう。逆に感情的になりすぐる場面がないため、「どこか冷めている人」「ちょっと冷たい人」と思われてしまうこともあります。
2-5.確からしい根拠を常に求めている
論理的思考ができる人は、基本的に何事にも「明確な因果関係があること」を求めています。そのため、「自分が納得できる理由(根拠)」がないと納得できません。
しっかりした根拠がないと話を信じることができないでしょう。
2-6.様々な視点で物事を見ることができる
仕事で考えると、以下くらいの視点はほぼ同時に考えています。
- 自分の視点
- 上司の視点
- 自社の視点
- 取引先の営業マンの視点
- 取引先の上司の視点
- 取引先の会社の視点
そのため、論理的思考ができる人は営業や交渉で、相手から条件を引き出したり、こちらの条件を相手に飲ませることが上手です。
2-7.たとえ話が得意
論理的思考ができる人は物事を分かりやすく伝える能力に優れています。
さらに物事を俯瞰して抽象的に考えたり、他の言葉に言い換えたりする力もあるため、説明にたとえ話を入れるのが得意です。
相手の知識レベルに合わせたたとえ話ができるので、どんな人でも理解しやすい説明ができるでしょう。
2-8.人の気持ちをわかろうとする(前提を揃える)
基本的に論理的思考とは、「相手に分かりやすく説明するため」に使われます。つまり、「相手が何をどこまで理解しているか」ということが分かっていないと相手が分かるように説明はできません。
そのためまずは、相手の気持ちや知っていることを知ろうとします。場合によっては事前に相手はどのくらいの知識があるかリサーチすることもあるでしょう。
論理的思考ができる人の中には、論理的思考が出来ない人を見下す人もいます。少しでも話が通じないと、「感情的な人には、説明しても分からない」と相手のせいにしてしまいがちです。
この場合は、「どうしたら相手に理解してもらえるのか」と論理的に考えることができていないので「ロジカルシンキングをできる風に見える人」と思いましょう。
本当に論理的思考ができる人はどんな人に対しても「この人にはどう説明したら伝わるか」を論理的に考えています。そのため、結果的に相手の気持ちを理解したり、相手が理解していない気持ちまで察することができる人もいます。
3.論理的思考ができない人の特徴9つ
論理的思考ができない人の特徴は以下9つ挙げられます。
- 「なぜ○○なの?」と考えるのが苦手
- 事実とそれ以外の区別がつかない
- 説明に因果関係がない
- 感情に振り回される
- 根拠のない話をする
- 根拠が「○○さんが言っていたから」
- 自分の視点でしか物事を見ることができない
- たとえ話が下手
- 人の気持ちがわからない
3-1.「なぜ○○なの?」と考えるのが苦手
たとえばスターバックスの看板を見た時に、
論理的思考ができる人は「なんでスターバックスの看板は、緑と白なの?」
論理的思考ができない人は「あ、スターバックスだ」
という2つの反応の違いがあります。ある出来事や事象に疑問を持つことが苦手です。
3-2.事実とそれ以外の区別がつかない
たとえば気温に関して考えてみます。
▼論理的思考ができる人の場合
事実として、
「気温が温かったのに、寒くなってきた」
仮説として、
「来週はもっと寒くなるかもしれない」(仮説)
「来週はまた温くなるかもしれない」(仮説)
▼論理的思考ができない人の場合
「気温が温かったのに寒くなってきた」
「来週はもっと寒くなるかもしれない」
「来週はまた温くなるかもしれない」
後者は、事実とそれ以外の区別ができず同時に考える傾向があります。事実とそれ以外の区別がつかないため、判断が遅れてしまうこともあるでしょう。
しかし因果関係を考えず気持ちと勢いで決断していける人もいるので、必ずしも判断が遅いから論理的思考が出来ない人と言える訳ではありません。
3-3.説明に因果関係がない
ろんりてき思考ができない人の特徴として、「説明に因果関係がない」という傾向があります。
「なんでその洋服を選んだのか」ときいても、「気分」「なんとなく気に入った」など答える場合は論理的思考ができない可能性があります。
3-4.感情に振り回される
自分がイライラしている理由が明確に分からず、「あの人最低。いやだ。」みたいに頭の中がそれだけになってしまいやすいです。
しかし楽しい時に「なぜ?」とか余計なことを考えず、その瞬間を本気で楽しめるという良さもあります。
3-5.根拠のない話をする
論理的思考ができる人からすると、「なんでその話、今始めるの?」と感じたりします。しかし本人は今その瞬間に思いついた話をしているだけで悪気はないのです。
根拠が無い話をするのが悪いという訳ではなく、あくまで論理的思考ができない人の特徴としてそのような傾向があります。
3-6.根拠が「○○さんが言っていたから」
仕事の場面で考えてみると、以下の理由付けをする人が多いです。
「部長の〇〇さんが言っていた」
「違う部署の〇〇さんが言っていた」
このように「〇〇さんが言っていた」という理由付けは何の根拠にもなりません。
3-7.自分の視点でしか物事を見ることができない
自分の視点でしか物事を見ることができないというのも、論理的思考ができない人の特徴です。
少なくとも相手の視点で物事を見ることができなければ、「相手が分かりやすい説明」はできません。
3-8.たとえ話が下手
たとえば窓口でお客さんにサービスの説明をする時に、たとえ話が下手だと用意していた説明が相手に伝わらないとパニックになってしまいます。
たとえ話が思い浮かばないので、繰り返し同じ説明をすることしかできません。しかし相手が聞いて分からなかった説明なので、繰り返し説明をしても理解される可能性は低いです。
論理思考が苦手な人は、説明が伝わらなかったときのために、あらかじめたとえ話をいくつかストックしておくと良いでしょう。
3-9.人の気持ちがわからない
感情的な人は「なんで人の気持ちが分からないの?」と怒ったりします。これを訳すと「なんであなたは私の気持ちを分かってくれないの?」ということです。
本当に相手の気持ちが分かる人は、「なぜこの人は私の気持ちを理解してくれないのだろう」「それともこの人の過去か考え方に問題があるのだろうか」など考えます。
そのため相手に急に感情をぶつけることはほとんどありません。これも本質的には自分視点でしか物事を見られないか、複数の視点で見られるかの違いです。
論理的思考力を鍛えるための4つの方法
なんとな論理的思考を鍛えると聞くと、印象を持たれるかもしれません。ですが、トレーニングすることで十分に身に着けることができるので安心してください。
そこで論理的思考を鍛えるための4つの方法を紹介します。
- 言葉を具体的にする
- 自分の思考の癖に気づく
- 本質的な問いを押さえる
- 主張と根拠の骨格を作る作る
方法①:言葉を具体的にする
日々の何気ない会話の中の「抽象的な言葉」を「具体的な言葉」に変えることが、論理的思考のトレーニングにもなります。
例えば、普段からこのような言葉をいってしまう人はこう言い換えてみましょう。
- 「やるべきことを見つけ、目標達成に向けて頑張ります」→具体的に何をやるのか明確にする。
- 「できるだけ早めに提出します」→具体的な期日を伝える。
とくに後者の「できるだけ」「早めに」の感覚は人によって異なります。抽象度が高い言葉は、自分の伝えたいことが相手に正しく伝わりにくいです。
全ての人が同じイメージができるよう伝えるためには、具体的に言葉を定義することが大切です。
方法②:自分の思考の癖に気付く
論理的思考を鍛えるためには、自分の「思考の癖」に気づくことも大切です。
思考の癖の改善は「クリティカルシンキング(批判的思考)」という、意識的に自分の考えを批判的に見る思考法の習得が効果的です。
クリティカルシンキングを鍛えることで、主観や先入観にとらわれずに物事を見る力が身に付きます。
しかしクリティカルシンキングは書籍を読んだり、動画を見たりしただけではなかなか習得が難しい思考法です。
方法③:本質的な問いを押さえる
論理的に考えるためには、「本質的な問い」を押さえることも重要です。
そのために「今目の前で片づけている業務は、具体的にどのような課題(=問い)を解決するためのものなのか」を常に抑えることを意識してみましょう。
「問い」をしっかりと押さえていないことが原因で、仕事が効率的に、効果的に進まないこともあります。「問い」を押さえるコツは以下2つです。
- 問いを分解する
- 問いの背景を確認する
【1.問いを分解する】
例えば、皆さんがカフェの社員だったとします。店長から「カフェを盛り上げるためのキャンペーンを考えて欲しい」と言われたとします。
このままだと、漠然とした「大きな問い」なので、
- 「ターゲットは?」
- 「いつまでに?」
- 「予算は?」
などのように、検討すべき問いを分解していきます。
【2.問いの背景を確認する】
- 「問いを提示している側の背景には、どのような問題意識があるのか」
- 「どのような経緯で、その問いは出てきたのか」
ということを理解することも重要です。
先ほどのカフェの例でいうと、一時的なキャンペーンなのか、上手く行けば継続したい制度なのかによって、考えるべきことの範囲が変わってきます。
背景を確認するためには、「こういうテーマが今出てきた背景には何があるのか」とシンプルに聞いてましょう。
方法④:主張と根拠の骨格を作る
「問い」を押さえたら次に考えるべきなのは、その問いに対する自分なりの「答え(主張)」です。「カフェを繁盛させるためには、どのようなキャンペーンをすべきなのか」が問いなのであれば、「そのために〇〇と△△にまず取り組むべき」が主張です。
そしてある主張をするためには、「なぜそう言えるのか」という根拠もセットで必要です。この2つがしっかりとリンクしていれば、説得力が増します。
- 主張「∼だと思う」
- 根拠「なぜならば∼」
主張を組み立てるための2つのアプローチ方法をご紹介します。
- 演繹法
- 帰納法
【1.演繹法】
演繹法は別名「三段論法」と言われる論理展開の手法で、一般的な事実(ルール)と観察事項、この2つの情報をもとにして最終的な結論を導き出すという方法です。
「演繹法」は決められた方針をもとに、その方針に沿ったアクションプランを導き出したい時」に活用できます。
有名な演繹法(三段論法)の例には以下のようなものがあります。
- 人間はいつか死ぬ(事実)
- ソクラテスは人間である(観察事項)
- よってソクラテスはいつか死ぬ(結論)
上記の場合、「人間はいつか死ぬ」という誰もが疑わないような普遍的な事実に
「ソクラテスも人間である」という観察事項を当てはめると、「人間であるソクラテスはいつか死ぬ」という結論が導き出されます。
これをビジネスシーンに当てはめてみると、以下のような論理展開が挙げられます。
- お客さんが100名来店されたらキャンペーンを始める(社内ルール)
- お客さんの来店人数が100名を超える(観察事項)
- キャンペーンを始める(結論)
【2.帰納法】
「帰納法」は、論理展開が演繹法とは逆の手法です。複数の事象から、自らある共通のルールを抽出し、無理なく言えそうな主張を導き出す方法です。「複数の周辺環境から、方針を導き出したい時」に活かせるでしょう。
例を挙げます。
- 食事制限をしたら、痩せたと言っていた。(事実)
- テレビで食事制限はダイエットに効果的と言っていた(事実)
等の情報から、「食事制限はダイエットに効果的だ」という一般論を導き出せます。
しかし帰納法で導き出される結論は、あくまでも複数の事実や情報の傾向をまとめたもので、普遍的な事実ではないため、注意しましょう。ダイエットには食事制限も効果的かもしれませんが、有酸素運動や無酸素運動をしていたかもしれませんし、栄養バランスも考えながら食事制限をしていたかもしれません。食事制限だけの効果とは異なる可能性もあります。
このように帰納法は結論が確実ではありません。帰納法は帰納的推論ともいわれ、ビジネスシーンではアンケートによる市場調査が当てはまります。
ロジカルシンキングの手法
ロジカルシンキングの手法として以下4つあります。
ピラミッド構造(トップダウンアプローチ、ボトムアップアプローチ)
フレームワーク思考(MECE、ロジックツリー)
ゼロベース思考
演繹法
帰納法
ピラミッド構造(トップダウンアプローチ、ボトムアップアプローチ)
物事を考えるときにピラミッドを思い浮かべ、最上部の階層を「結論」とし、その上で下の階層にさまざまな根拠を積み重ね、結論を下支えする構造を築きます。これがピラミッド構造という考え方です。
簡単に言うと、「結論はいつも根拠で支えられている」という理論を図式化したものです。目指す結論をピラミッド最上部の形で明確化し、根拠と同時に可視化されることで、問題解決へスムーズに向かうためのフレームワークです。
ロジックを組み立てるアプローチ方法には以下2種類あります。
アプローチ方法 | 考え方 | 論理展開方法 |
トップダウンアプローチ | ピラミッドを頂点から下に降りながら考える | 「仮説→根拠→事実」 仮説を出発点として論理展開を行う方法 |
ボトムアップアプローチ | ピラミッドを下から頂点に上りながら考える | 「事実→根拠→仮説」 積み上げで仮説を構築する方法 |
フレームワーク思考(MECE、ロジックツリー)
「MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)」とは、「漏れなくダブりのない状態」を指します。「ミーシー」とよみます。
ロジカルに考える場合は、ロジックツリーの活用が有効です。
基本となるロジックツリーには以下3種類あります。
種類 | 意味 |
WHYツリー | 問題点の原因を掘り下げて考えることで根本的な原因を見つける |
HOWツリー | 課題解決の方法を整理して優先順位をつける |
WHATツリー | 大きな要素を小さな要素に分解する |
ゼロベース思考
「ゼロベース思考」とは、先入観に囚われず、白紙の状態から考える姿勢のことです。思い込みに囚われてしまうと、新しい発想が生み出せなかったり、自分で限界を作ってしまいます。
自分の中の無意識な思い込みや前提条件をなくして、「どうすればできるのか」ということをゼロベースで考えることが大切です。
【ロジカルシンキングで活用する論理展開の手法】
ロジカルシンキングで活用する論理的展開の手法は、以下2種類です。
- 演繹法
- 帰納法
ロジカルシンキングには上記2つの具体的手法がありますが、いずれの手法にも注意点があります。それも合わせて紹介します。
演繹法
演繹法とは、決められたルールや基準に事象を当てはめて、その結果をもとに結論を導き出す論理展開手法のことです。
すでに存在するルールや基準、あるいは課題に合わせて事前に定めた新しいルールや基準に基づいて事象を仕分けていく方法です。
下記で紹介する帰納法と違い、論理的展開の基準となる指標があるので、比較的簡単にロジカルシンキングを実行できます。
注意点としては、演繹法は「すでに方針が存在していること」「既存の方針が正しいこと」、この2つが揃うことが前提としてあります。
そのため「方針が存在しない」「方針そのものが間違っている」場合、ロジカルシンキングの結論が誤った方向に導かれる可能性が高くなります。
帰納法
帰納法とは、複数の事例を挙げ、実例の共通点を導き出し、共通点から結論を出すという手順を持つ論理展開手法です。
できるだけ多くの実例を挙げることで、問題の本質が探りやすくなります。ロジカルシンキングの精度を上げるために、偏った実例にならないよう複数人から出される実例を採用するなどの工夫が必要です。
注意点として帰納法は、「複数の実例=状況証拠」をベースとして共通点を見つけ、結論を引き出す論理展開手法です。そのため以下の場合、帰納法そのものが成り立たなくなる可能性があります。
- 実例や状況証拠そのものに間違いがある
- 共通点を探し出すときに、論理の飛躍がある
- 共通点から結論を導く道筋に論理の飛躍がある
ロジカルシンキングを身につけることのメリット
ロジカルシンキングを身に着けるメリットは以下2つあります。
- 自分の考えが伝わりやすくなる
- 原因特定と問題解決の能力が上がる
自分の考えが伝わりやすくなる
ロジカルシンキングを身に着けるとコミュニケーション能力が身に付きます。コミュニケーションの本質は「聞く力」と「伝える力」です。
ロジカルシンキングを使用していくと、以下2つを身に着けられます。
- 相手の伝えたい本質を正確に捉え聞く力
- 自分が伝えたいことを正しく相手に伝える力
原因特定と問題解決の能力が上がる
ロジカルシンキングを身に着けると、目の前の状況や直面した課題に対して、以下のように分析する考え方が身に付きます。
- 事象や課題を分類して考える
- 原因と結果を把握し、因果関係を確かめる
- 客観的に分析し、適した対策やとるべき行動を結論付ける
課題に対して主観に基づく対応をとったり、その場の感情に左右されず、原因と結果の関係性を客観的に捉え、課題を解決する力が付きます。
分析力が身につくと問題解決能力も向上するため、ビジネスの現場ではそれらを業務効率化につなげられます。
ロジカルシンキングのトレーニング方法
ロジカルシンキングのトレーニング方法として以下5つ挙げられます。
- ロジカルシンキングを日常的に実践する
- ゼロベース思考を習慣化する
- 意識して結論から話す
- どんなことにも仮説を立てる
- セルフディベートで論理的思考を補強する
ロジカルシンキングを日常的に実践する
ロジカルシンキングは実践で身に着けることができます。普段から何気なく行っている事も、ロジカルシンキングの手法を意識的に取り入れてみると、効率が良くなったり、新しい発見があるかもしれません。
トップダウンアプローチ(ボトムアップアプローチ)で論理展開(仮説構築)を行ったり、ロジックツリーで複雑な問題を漏れなくダブりなく考えてみることは、トレーニングとして良い方法です。
無意識に行っていたことを意識的にロジカルに考えようとしてしまうと、初めは時間がかかってしまうかもしれません。しかし、慣れてくると論理的な思考スピードが速くなるでしょう。
ゼロベース思考を習慣化する
ゼロベース思考の習慣化は、以下2つのことが有効です。
- これまでの自分の思考プロセスを確認し、思い込みや先入観を明らかにする
- ブレインストーミングでできる限り多くのアイデアを出す
いずれのトレーニングについてもグループワークを行い、チームのメンバーにフィードバックしてもらうとより効果が上がるでしょう。
意識して結論から話す
「結論から話し、その後に根拠や具体例、説明などを入れる」というトレーニング方法も効果的です。
結論を頂点に置き、その下で論理展開を広げることで、ピラミッド構造のトップダウンアプローチのトレーニングができます。
結論にたどり着くまでに時間がかかると、聞いている側も集中が途切れやすくなるため、結論から話すことで、議論の生産性も上がるでしょう。
どんなことにも仮説を立てる
問題の解決策や新しいアイデアを出したい時、むやみやたらに考えるのではなく、まずは仮説を立ててみましょう。そして仮説に向かって根拠を考え、根拠に基づくさまざまな事実を集めて展開していってみてください。
仮説が正しければ、仮説を結論として再構築し、根拠のあるアイデアとして採用もできます。
セルフディベートで論理的思考を補強する
セルフティディベートとは、1人で行うディベートのことです。
ディベートでは、相反する意見のどちらかの側に立ち、その意見について深く掘り下げて考え、根拠や事実、未来的な予測などを収集し、相手や第3者を説得できるよう主張します。
これはロジカルシンキングを鍛えるためには効果的な場です。
通常のディベートでは相手や司会者、審判員が必要ですが、セルフディベートは1人で行うので、時間や場所に縛られず、どんなテーマでもできます。ライトなテーマから難しいテーマまで、さまざまなテーマを試してみることでロジカルシンキングを養うとともに知見も広がるでしょう。
ロジカルシンキングの注意点
ロジカルシンキングを実践していくと、それだけで仕事の効率が上がったり、良いアイデアが浮かんだりするかというとそうではありません。
ロジカルシンキングの注意点を知らずにいると、思考の迷路に入り込み結論がいくら考えても出ない可能性もあります。
ロジカルシンキングを実践する際は、以下のことに注意しましょう。
- 「前提」が変われば正解も変わる
- 裏付けとなるデータ(事実)は無数に存在する
- 論理を展開する「視点」は1つではない
- ロジカルシンキングの応用
- ロジカル・コミュニケーション
- ロジカル・プレゼンテーション
「前提」が変われば正解も変わる
この論理は「前提・推論・結論」の3つのプロセスで成り立っています。論理上で前提としている事実やルールが変われば、必然的に正解も変わります。つまり事実であると考えていた情報が間違っていたり、思い込みによって誤ったルールを用いていた場合、間違った結論が導き出されてしまいます。
そして現在は普遍的な事実として知られていることでも、未来はどうなっているか分かりません。前提としていう事実が変化するということにも注意が必要です。
裏付けとなるデータ(事実)は無数に存在する
ロジカルシンキングは事実の裏付けが伴って初めて説得力を持ちます。しかしある主張に関する事実は無数に存在し、その無数に存在する事実すべてを収集して検証することは物理的に不可能です。
帰納法のように、さまざまな事実から一般論を導くときは、情報収集が論理を固める重要要素です。そのため初期段階で得られたデータとは異なる内容のデータが後から出てくると、導き出される一般論や結論も変わります。
初めはAが結論だと思っていても、事実をさらに集めると実はBが結論かもしれないと考えるようになる可能性は十分あります。より普遍的で客観的な結論を導けるよう、事実の数は必要です。
論理を展開する「視点」は1つではない
ロジカルシンキングでよく使う手法が「要素分解」です。そして要素分解をするためには必ず「視点」が必要です。
1つの目的に対する「要素分解の切り口」は無数に存在し、どのような「切り口」を想定するかは結論を出す人が想定している「仮説」に依存します。
ロジカルシンキングは「要素分解が必要」と言われますが、「要素分解の切り口」までは教えられません。「要素分解の視点」はロジカルシンキングとは別の能力です。
ロジカルシンキングの応用
ロジカルシンキングを応用した手法を紹介しました。ロジカルシンキングを身に着けたら、たくさんのことに応用してスキルアップしていきましょう。
ロジカル・コミュニケーション
「ロジカル・コミュニケーション」は、ビジネスシーンにおける対人関係に活かし、よりスムーズに関係を築くことです。
信頼関係の構築に繋がるだけでなく、簡潔で論理的なロジカル・コミュニケーションを実践すると、ミスコミュニケーションが減り、業務の効率化に繋がります。
ロジカル・プレゼンテーション
ロジカルシンキングは「ロジカル・プレゼンテーション」にも応用できます。
たんに見やすい資料を作るのではなく、論理的に内容を構築してプレゼンをすることで、説得力が増し、ビジネスチャンスの拡大に繋がります。
おわりに
ロジカルシンキングは、答えを論理的に導き出すため、ビジネスにおいて大きな力を発揮する思考法です。ロジカルシンキングを身に着けると、コミュニケーション能力や分析力などが向上します。
ロジカルシンキングを身に着けたいと考えている人は、セルフディベートや日常的に論理的思考を実践したりすることがおすすめです。
論理的思考は鍛えたからといってすぐに身に付くものではありません。ロジカルシンキングを活用できるよう、地道に努力していきましょう。
参考にした書籍